みんな邪魔

個人的には、比較的イヤミス初心者にも読みやすい作品なのではないかと思います。

この作品に登場するのは、エミリー、マルグリット、ガブリエル…といった、どこか耽美な雰囲気が漂うカタカナ名を持った人たち。ところが、舞台はバリバリの現代日本です。

彼女たちが名乗る外国人名は、いわゆるハンドルネーム。彼女らが所属する、少女漫画のファンクラブの中でのみ通用する名前なのです。

それを名乗るのが、若い少女ではなく、ほとんどが40代~50代の妙齢の女性なのだから、想像すると大きなギャップがあります。けれど、そのこと自体はむしろ良いことだと思います。熱中できる趣味、いつもとは違う自分になれる場所があることは、人生にいい影響を与えると思うからです。

しかし、この作品はイヤミス。当然、平和な女性の園、で終わるわけがありません。あるひとりの女性の家庭事情が悪化したことを皮切りに、メンバーの失踪、殺人事件といった事件が次々と起こり始め、メンバーがひとりふたりと減っていくのです。そしてその過程で明かされる、メンバーそれぞれの素顔。気取った淑女の仮面の下に隠された人生が、赤裸々に語られます。そのギャップが強烈で、しかしいやしくも目が離せなくなってしまうのです。